10.心声文と漁川保護少年団(1990)

 心声文とは平成二年。当時六年生だった新五と、担任であった、吉弘文人先生の交換日記で、『心の詩』のやり取り集です。
 5年の時、六年の時。子ども達には、『僕たちの愛する川』がありました。
 先生と子ども達の川・・・・・
 大人達には、踏み込めない『僕たちの川』・・・・
 私達大人は、気づかれないように そーっと そーっと 見守っていました。
 ある日、居間のテーブルの上に、「ポン!」と一冊の原稿用紙のレポート状の物を見つけました。表紙の上には、『心声文ー内倉新五』と書かれていました。
 悪いかなと思いながらも、ちょっと、覗き見しました。
 その中には、新五の心の叫びが綴られていました。
 先生は、我が子の叫び声を、ちゃんと受け止めていました。
 「こんな事、とても親には出来ないな・・・。」
 なぜか、嬉しくて・・・、溢れる涙を押さえることが出来ませんでした。
 10年経ったら、もう時効でしょう。
 ここに、新五と吉弘先生との心声文を紹介しましょう。
 
 

内倉新五
  (当時恵み野小学校6年 吉弘先生との交換日記ー心声文ーより抜粋)

平成2年8月10日(1990・8)
漁川保護少年団ができる ー第一話ー


「コバ、漁川にいくべ」僕が言った。
「うん、行こう」コバが答えた。
 廊下で話をしていると キーンコーン カーンコーン ベルが鳴ったので急いで教室に戻った。三時間目が終わって僕は、ナマの所へ行った。
「ナマ、コバ達と漁川に行くべ」
「うん、サッカー君も連れていこう。」
 その瞬間ぼくは、4年生のとき、とても仲が悪かったのに何時から、ナマと仲良くなったのかを思い出してみると、漁川のおかげだ。ぼくは、とてもありがたいと思った。
 ナマとぼくは、その日の学校帰りに沢山の人に、日曜日、漁川に行けるか聞いてみた。すると、10人の人が集まった。
 次の日、「漁川保護少年団にしないか」と、ナマが言った。
「うん、そうしよう」と、ぼくが言った。
 ナマが、「看板とか作って、立てたら、おれ達、有名にならないか?」と言った。
 その日の、帰りの会が終わると、ぼくたちは、会員証を作りました。何ともへぼい会員証を。ただ、漁川と大きく書いて、会員証と書いただけの・・・。
 それでも、『会員証』だ。
 関係ない人にも、みんなに配った。
 これで一応、漁川少年団は、完成した。

┌────────────────────────┐
│ 〈吉弘先生〉                            │
│    なるほど!これが、漁川保護少年団の始まり     │
│   だったんだ。とっても良く解るよ。どうもあ         │
│   りがとう。                            │
│ さて、漁川保護少年団で何をするか、みんで         │
│ 考えよう。                              │
└────────────────────────┘




平成2年8月12日(1990.8) 内倉新五の心声文より      

     漁川保護少年団でやりたいこと ー第二話ー



 漁川保護少年団は、何と遊びしかやっていないのだ。
 しかし、もうこんな遊びを、やってる暇などない。
 赤い橋まで、大好きな漁川が、護岸がつけられて死んでしまう。
 その後、漁川すべてを、護岸で埋め尽くされる。すると川が汚れる。カワセミもいなくなる。魚は、ウグイだけだ。
 ダムを造らなくても、木がある。漁川が氾濫を起こしても木が守ってくれる
 人は、木と護岸を交換してしまった。
 木は、酸素を出してくれる。護岸が何を出すんだ。出るのは、生き物の死骸だけだ。
 人は、自分で自分を苦しめている。
 だからぼくは、漁川保護少年団で、川を守りたい。やることは、まずゴミ拾い。看板を一人ひとつずつ作って、好きなことを書いてもらう。そして、それを川の所々に置く。
 それ以外に、みんなで色々な事を考えてやりたい。

┌──────────────────────┐
│〈吉弘先生〉                         │   
│ 最近は、新五の文を読むのがとても楽しみで     │
│ す。今日のも最高。                    │
│ 新五の怒りは、自分にぶつけなきゃ!自分が    │
│ 頑張らないとね。                      │
└──────────────────────┘



平成2年8月15日(1990.8) 内倉新五の心声文より

ごみ拾いに行った  ー第三話ー


 ぼくは、漁川保護少年団で、ごみ拾いを、何時やるかを考えていた。 そして、ナマと、相談して日曜日に決まった。
 学校の帰り、そのことを、みんなに言った。
 土曜日、いつものように、ぼくは、サッカー君と漁川に遊びに行った。行くとき二人で話をした。
「なんか俺たちよー、毎日漁川に遊びに行くけど、友達の家に行ってるような気がするな」
「俺なんて、『漁川』自分の家みたいだぞ!」
 ぼくは、漁川に毎日行くなんて、今は全然珍しくない。毎日行っているので、ゴミが、むかついてくる。だから僕は・・・・でも僕は・・・・自分の為だけにやっているのではない。漁川の為にもやっているんだ。
 僕たちは、目的地に着いた。
 そこは、とても良い所だと思う。木が全然切られていないのだ。長い間遊んでいると、先生が来た。
「おう!新五たち。博章と孝がいるから六年四組の場所に行ってて!」
 と言った。僕と、サッカー君と、コバとで急いで六年四組の場所に行った。
 着くと先生の言った通り、ササキンとナマがいた。
「アッ!サッカー君とウチクラ!コバ!」ナマが言った。
 吉弘先生と木村先生も、もう着いていた。先生は、
「漁川と千歳川の境目に行って、ひとり二十本の薪を集めて来て」と言った。
 僕たちは、漁川と千歳川の境目を目指していたのに、反対の岸に着いてしまった。
 戻って、僕たちは、薪の事なんか忘れて、川に入って遊んでいた。
 先生が、
「薪はどうしたの?」と言った。するとみんなは、水の中から飛び出して、あわてて薪を探し出した。みんなは、葭川先生の集めた薪まで、拾い出した。 帰るとき、
「先生、夜来るから」と言った。
「親と一緒ならいいよ」
 夜、お母さんに、カロリーメイトを持って、サッカー君と連れていってもらった。
「明日は、ゴミ拾いなんだから、はやく寝ないとな」と先生が言った。
「だって、一時からだもん」サッカー君が答えた。
「えっ!それだったらゴミ全然拾えないっしょ!」僕もそう思っていた。
 次の日、人が集まるか不安だった。ナマから電話が掛かってきた。
「なあ!ゴミ袋を買いに行こう。」
 セイコーマートでゴミ袋を買って、サッカー君も呼んで遊んでいると、いつの間にか一時になってしまった。
 初めに、タクが来た。次に、コバとオバラが来た。次に、高木も来た。僕もあわせて10人になった。ナマが、
「これだったら人が少ないから、もっと集めよう」と言った。
 その時、僕の自転車のタイヤがパンクした。何と運の悪いことなんだ。仕方なく僕は、弟の自転車を借りて出発した。
 先ず始の場所は、5年4組の場所だ。ここには、2袋分のゴミがあった。
 6年4組の場所では、一袋分のゴミがあった。帰りは、僕がゴミを持った。 学校に、ゴミを置いて帰った。
 僕は、多分ゴミ拾いに行きたくない人がいると思う。だから、どうやってすればいいか考えている。 

┌────────────────────────┐
│ 〈吉弘先生〉                            │
│ うん、うん。色々考えて! 頑張って考えて         │
│ 辛いけど・・・・・そうすれば、きっと、い            │
│   つか、良いアイディアが浮かびます。          │
└────────────────────────┘





平成2年9月17日(1990.9) 内倉新五の心声文より

11.サイクリングの下見に行ったこと ー第四話ー


 9月15日に、漁川のサイクリングに行くことになっていた。しかし、その日は雨だった。たぶん僕は悪いことをしすぎなので、罰が当たったのだろう。
 でも、そんなに悪いことはしていないのだ。もしかしたら、勉強していないからだと思う。
 次の日、晴れた。やっぱり僕は行いが悪いのだ。
 しかし、いいことを考えた。下見に行くことにした。ナマと、田中君と行くことにした。
 雨が降ってこなければいいなーと思った。自転車に乗っていると、田中君が遅くなってきた。田中君は、どんどん離れて、ついに見えなくなった。
 僕とナマは、止まって待っていた。やっと着いて走り出すと、また、見えなくなってしまった。そして又、それの繰り返しを何回もやっているのだ。何ということだ。
 僕たちは前、森林公園に行った時は、すごく疲れたのに、今日は全然疲れていない。又走り出した。
 次は、田中君の得意な下り坂だ。
「早い!早い!早すぎる!」
 すぐに目的地に着いた。
 始に火を起こした。しかし、僕たちでは、三秒しかもたない。一生懸命やっているうちに先生が来た。
「えっ!」驚いたように先生が言った。先生は薪を集めてきてすぐに火をつけた。田中君が
「さすが、せんせいだなー・・・」と言った。 
 僕は、リンゴを焼いて焼きリンゴにして食べていると、いきなり田中君が、
「くれっ!」と言った。僕は二口だけやった。しかし、その一口が多かった。二口で、3分の1食われてしまった。残りを回し食いする事にした。何とむごい事に、一番始の一口で4分の3がなくなった。僕は、ほんの少ししか食べられなかった。
 帰っている途中、先生が嬉しいことを言ってくれた。
「帰り学校によるように!」
 着くと、先生が、うどんを作って食べさせてくれた。とても美味しかった。
 その後に、ビデオを見せてもらった。

┌────────────────────────┐
│ 〈吉弘先生〉                           │
│ ご苦労様でした。あの時のうどんは、本当に        │
│    本当に、美味しかったね。                 │
│                                   │
└────────────────────────┘





平成2年12月25日(1990.12) 内倉新五の心声文より

12.恵子連の表彰式で言いたいこと ー第五話ー


 12月24日、僕たち漁川保護少年団が表彰されることになった。なんてすごい事なんだ。
「やったーって!気分だ。」
 けど・・・・。僕たちは、一体何をしたんだ。
 ゴミ拾いが一回と・・・・・。
 サイクリングで遊びに行った事が一回・・・・
 だけど、漁川は大好きだ。夏から秋にかけて、毎日のように遊びに行った。
 五年生のとき、僕たちの遊び場だった場所が、たったの3日で護岸工事のために、木が切り倒されてしまった。ものすごくショックだった。
 この間、恵望園(特別養護老人ホーム)に行って、おじいちゃん、おばあちゃんに、昔の漁川の話を聞いてきた。昔の漁川は、シャケが沢山上がった。
 でも、今は、下流には、ウグイと、ヤツメウナギしかいなくなった。どちらもまずい魚だ。コンクリートで敷き詰められた漁川は、もっと、もっと魚はいなくなってしまう。
 僕が大人になっても、このままの漁川でいてほしい。空き缶やゴミで汚れた漁川は、見たくない。
 漁川保護少年団でもっとする事を考えなくてはいけないと思う。

┌───────────────────────┐
│ 〈吉弘先生〉                          │
│ 今まで考えたものだけでなく、他にも色々         │
│   みんなが出きることがあるかもしれない。      │
│ 頑張ってね。                          │
└───────────────────────┘







13.平成3年3月(1991.3) 内倉新五の心声文より

     漁川保護少年団   ー第六話ー 最後の心声文


 僕は、この二年間を思い出した。どんな事があっただろうか、初めて、漁川に行った。イグルー(エスキモーの家)を作った。恵み野小祭り、漁川の絵、朝の劇、数えきれないほどの出来事があった。
 殆どのことは終わってしまったけれど、漁保護少年団だけは、まだやらないことが沢山ある。僕たちが卒業したらどうやって続けて行くことが出来るだろう。
 僕は考えた。
 吉弘先生は、これからどうなるんだろう。
 側にいてくれればいいなあ。もし先生が、転勤したとすれば、僕たち保護少年団は、自分たちでやって行けるだろうか?
 もし、先生が遠くに行っても漁川保護少年団は続けて行きたい。
 ラッキーなことに、まだ、『漁川物語』は出来ていないから、みんなと会う事が出きる。
 それは、みんな中学校に行くのだから、合う事は出きるけれど、こういう風に合う事は出来ない。
 漁川保護少年団は、これから、どうなって行くのだろう。

┌───────────────────────┐
│ 〈吉弘先生〉                          │
│ 大丈夫!                            │
│ 新五にやる気さえあれば、絶対に大丈夫!       │
│ 頑張れよな!                         │
│ 新五!                             │
│ いよいよ、お別れですね。                  │
│ 二年間。色々な所に行ったよね。漁川、ウ        │
│     トナイ湖、ナマズはいつか捕まえようぜ!    │
│                                 │
│ 漁川保護少年団をよろしく頼みます。           │
│ 新五の言う通りだ!                     │
│ これからが勝負なんだよ!                 │
│                    吉 弘 文 人      │
└───────────────────────┘





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