黒部別山・中尾根支稜&白ハゲ・東尾根 扇沢〜新越尾根〜岩小屋沢岳・北西尾根〜白竜峡〜黒部別山・中尾根支稜〜 剱沢二股〜仙人新道〜坊主尾根〜白ハゲ・東尾根〜白萩尾根〜馬場島 2007年2月25日〜3月3日 M 大森隼人(24歳) 上田幸雄(40歳) ともにチームブランカ所属 1997年12月の初挑戦から9年2ヶ月の歳月を擁し、3度目の挑戦で念願の白竜 峡横断・中尾根支稜登攀、合わせて1999年からの空白期間を経て白ハゲ東尾根 をトレースした。 記録的な寡雪の年であったが白竜峡は期待を裏切らない様を見せ、GWのよう な好天に恵まれたものの中尾根支稜、白ハゲ東尾根登攀は僕らの胃袋を満足さ せるに十分であった。 2/25 快晴 暑い! 日向山ゲート(8:20)〜扇沢(10:30)〜岩小屋沢岳(15:30)〜 北西尾根2050m(17:20) 放射冷却で冷え込んだ朝。 関電の車両を横目に見ながら緊張を和らげるために黙々と歩みを進める。陽光 に輝く扇沢、もう少し季節が進めばスキーヤーの賑わいで溢れかえる要となる。 その要から最短距離で延びる尾根は高みを重ねるごとに様々な表情を見せてく れる。締めくくりの稜線直下には数十メートルにわたる破断面が見受けられ、 新雪に隠れたクラックが時限爆弾のように思われた。 新越尾根を登りきるといつものように剱が手招きしているが、今回彼女の招待 は受けられない。未練を振り払うかのように北西尾根のパウダーを蹴散らしな がら西尾根分岐へ。 2/26 快晴 暑い!! 出発(5:50)〜1780m(6:30)〜中尾根支稜末端(10:30)〜 1600m(14:50) 胃の痛くなるような朝を迎える。記録的な寡雪で白竜峡が埋まっているのか?  前回は赤ムケの上部まで下降したものの青き流れを目の当たりにして引き返 した経緯がある。行くか? 戻るか! 行くしかないだろう。 井戸の底への下降が始まる。赤ムケ上部の藪の隙間から出合がデブリで埋まっ ているのを確認してロープをセット。最後は空中気味の懸垂となり、もう後戻 りは出来ない。ただ祈るような思いでロープを抜き、スベリ台のような赤ムケ のルンゼを下る。赤ムケ出合の下流は所々落とし穴のように水面が顔を覗かせ る。まだ陽の差し込まない薄暗い谷底。別山谷出合までは雪の掛け橋が絶望を 希望に変えてくれる。河原の岩が見えていた9年前とは隔世の世界。あこがれ ていた雪の白竜峡。光り輝く別山谷に取り囲まれた展望台のような中尾根支稜、 ただ周りの景観に感嘆あるのみ。 要所でロープを繋ぎ、小島のような台地へ。 2/27 快晴〜雪 出発(6:30)〜1720mコル(11:20)〜中尾根2200m(16:10) 荷上げを交えながらブッシュのキノコ雪を越えていく。6pで目の前に巨大なキ ノコ雪が現れ、奥には絶望的な壁が控えている。どう越える? とりあえずキノコ雪の基部までロープを伸ばすとラインが見えてきた。右側の 傘の下に出来た雪のバンドをトラバースしてショートカット。回り込んだコル から見ると、絶望的な壁は枝尾根の側壁で支稜はR4と右から這い上がるルン ゼの間に形成された貧弱な尾根となっていた。しかし、まともに登っていたの では支稜泊まりとなり今晩からの積雪で明日は身動きできない可能性が高い。 なんとしても今日中に中尾根主稜に抜けてしまいたい。右から這い上がるルン ゼに登路を求め支稜をバイパス。ルンゼを抜けて支稜と合流すると緩やかなス ロープとなり中尾根の側壁へ消えている。雪の舞い始めた側壁をスタカットと コンテを交えながら中尾根に這い上がる。 2/28 雪〜晴れ 出発(10:20)〜黒部別山(12:40)〜剱沢への下降尾根1750m(14:50) 予報では午後から天候の回復が見込まれる。昨夜からの積雪は周辺で50cm程。 表層雪崩を警戒しスタカット、コンテを交えながら頂上を目指すが頂上直下で 目の前の雪が視界を遮る。一瞬戸惑ったが確実にステップを刻み、アックスを 決めていたので難を逃れることができた。 頂上に二人そろった頃には晴れ間も覗き、視界が開けてきた。巨大雪庇を眺め ながら北峰のコルから剱沢へ下降。八ッ峰東面が幻想的な世界を見せてくれる。 3/1 快晴 出発(6:00)〜二股(6:30)〜仙人山(10:30)〜小黒部谷1525m(12:00) 〜東尾根1900m(14:10) 仙人新道はいかにも雪崩れそうな様相を呈している。積雪の状態を確認しなが ら登行を進め、八ッ峰北面に思いを寄せていると、それを掻き消すようなエン ジン音が響いてくる。現在、富山県警山岳警備隊が剱岳周辺で訓練を行ってお り、登山者が安心してここで活動できるのも彼らのおかげである。近年の剱岳・ 黒部周辺での様々な登山活動は彼らの存在がなければ成し遂げることが出来な かったはずである。紙面を借りて改めて感謝の意を表したい。 さて、仙人山から眺める白ハゲ東面は魅力的な雪稜を小黒部谷へ描いている。 黒部の地にあるが故に人目にさらされることもなく、静寂を保っているに違い ない。坊主尾根を経由して小黒部谷に降り立ち、東尾根のプラトーへ。 3/2 晴れ 出発(6:00)〜北方稜線(14:30)〜白萩尾根2200m(16:00) 薄雲が広がり陽光を遮断してくれる。剱の女神は最後まで我々の味方のようだ。 100mも歩かないうちにロープを結ぶがラッセルは膝上、空身でロープを伸ばす もののアンカーとなるものは雪と時折現れるダケカンバやブッシュ。  等高線の密度が濃くなり、スタカットに切り替えるもののスノーリッジの右半 分は谷底へ切れ落ち雪庇を形成している。求めるラインは嫌でも傾斜の緩い左 側の雪壁になる。絶妙な間隔で現れるダケカンバ・ブッシュ・シュルントの奥 に露出した岩肌が絶好のアンカーと成り得る。5p伸ばしたところで雪壁はブッ シュの壁と消え青空に向ってロープを伸ばすと目の前にカイッシュを思わせる ピークがそそり立っている。似非カイッシュの基部まで雪稜を3p。 このカイッシュ、幸いブッシュに覆われており、アンカー・ランナーには事欠 かない。3pでここを越えるとフィナーレは美しいスノーリッジを辿る。 北方稜線を白萩山まで移動し、女神の前で最後の晩餐。 3/3晴れ〜曇り 出発(6:00)〜1900m(9:00)〜馬場島(11:30) 本日の予想最高気温は15度。底雪崩の恐怖からか、予定通りの藪尾根下降に嫌 気がさして、途中からエスケイプして谷筋へ。 白萩尾根を完全トレース出来なかったことに後ろめたさを感じさせるほどでは ないと思うのは唯の言い訳に過ぎないのだろうか・・・
写真の解説は付けません。想像してお楽しみください。 写真 写真 写真 写真 写真 写真 写真 写真 写真 写真 写真 写真 写真 写真
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